インドの首都デリーの一般家庭をまわって学んだ、メヘンディ(ヘナタトゥー)のやり方をまとめ、ご説明させていただきます。
ヘナタトゥーとは、「ヘナ」という植物の葉っぱの自然の力で、肌を一時的に染めるものです。
仕上がりの色はオレンジ・茶色・こげ茶色ですが、まずは一番染まりやすい「手のひら」からためしてみるとよいでしょう。
ペーストとの対話に慣れてきたら、手の甲、その他の部位、と、染まりにくい部位に少しずつ移っていくとよいと思います。
なお、ヘナには、肌を黒や灰色に染める力は全くありません!
東南アジアの観光地などで施される、簡単に黒色に染まるものは、
肌に有害な黒い化学物質で染めている「ブラックへナ」です。どうぞご注意ください。
さて、まずは道具をそろえましょう。
ヘナ・パウダー以外は、一般家庭の台所にあるものばかり。
肌の準備をします。
ヘナは、清潔なあたたかい肌にのせたときに、最高の効果を発揮します。
ペーストを塗る1日前から、ローション・クリーム・日焼け止めなどは塗らないようにしておき、
塗る前に、肌を石鹸で洗い、かわかしておきましょう。
また、体毛の濃いところにデザインする場合は、体毛を剃っておくことをおすすめします。
ただし、剃った直後の肌には、目に見えない小さな傷がたくさんついていることがありますので、
塗る直前ではなく、半日以上前に剃っておくのをおすすめします。
きれいに洗った肌にそのまま描く派、
ユーカリオイル・クローブオイル・アーモンドオイル・オリーブオイルなどのオイル類や、オイルとハーブを混ぜたmehlabiyaオイルをごく少量パッティングしてから描きはじめる派、
こだわりの方法は人それぞれです。
ヘナ・パウダーのメーカー「Brite」によれば、ペーストを塗る前にはクリームやオイルを塗る必要はなく、ペーストを塗ったあとに何かのオイルを塗ると発色が良くなるということですが、
先にオイルでマッサージをしておくと、毛穴が開いて色が濃くなる、という人もいます。
パウダーを数回ふるい、細かいパウダーだけにします。
密閉して冷暗所に置いておいたパウダーを使いましょう。
ヘナパウダーは、空気に触れると急速に染色能力が落ちます。
そのパウダーをふるいにかけて、細かいパウダーだけにしてあげましょう。
メヘンディ用のヘナパウダーは、もともと細かい粉状で売られてはいますが、
多かれ少なかれ、不要なゴミや葉っぱクズ(葉脈や枝のかけら)が混入しています。
そのままペーストを作って描きはじめると、コーンのしぼり出し口がたびたび詰まってしまいます。
ひと手間ではありますが、是非この作業を行うことをおすすめします。
〔太い線だけを描く場合(かんたんなやり方)〕
できるだけ目の細かい茶漉しにヘナパウダーを入れ、
細かくゆすってふるいます。
一回目は、ざっとふるって、大きなかたまりやゴミ、枝のかけらなどを除きます。
二回目以降は、小さな葉脈クズを丁寧に取り除くつもりで。
〔細い線も描きたい場合(細かいパウダーになります)〕
いらなくなったストッキングの切れ端など、目の細かい布を、適当な大きさに切ります。
お皿の上で、布をピンと張ります。
左手をうまく使ってピンと張ってもよし、上の写真のように、輪ゴムなどを使ってもよし。
布の上に、ヘナパウダーを少しずつのせ、
指やスプーンの背などで、パウダーをぎゅっぎゅっと押して、布を通過させます。
布の上に少し残るクズは、
混ざってしまわないように、別にとっておくか、捨ててしまいましょう。
さらさらのパウダーにしましょう。
パウダーが細かくなればなるほど、コーンの出口が詰まることが少なくなり、描きやすくなります。
描く前に、ペーストを5時間〜48時間おきます。←忘れがちですが、重要です。
このプロセスを省略しても、手の平などの色のつきやすい部分にはしっかり色がつきますが、
腕など、色のつきにくい部分に使う場合、これを端折ると本当に全く色がつかないこともあります。
ホコリが入るのを防ぐため、また無闇に乾燥するのを防ぐために、布やガーゼで覆いをします。
ラップは空気を遮断してしまうため、使わない方がいいそうですが、少量のペーストの場合はラップを使わないとペーストが完全に乾燥してしまうこともありますので、臨機応変に。
ヘナペーストは室温に保ち、冷蔵庫には入れないで下さい。
おく時間についてはいろいろな意見がありますが、インドでは「一晩おく」または「丸一日おく」という人が多いようです。「48時間おいたときに最高の効果を発揮する」と主張する西洋のアーティストもいます。
なお、6時間と30時間で比べてみると、30時間おいたときの方が濃くついているようでした。
(少量で乾燥しやすいため、6時間まではラップで覆いをし、6時間〜30時間の間はコーンに入れておきました)
しかし、長くおきすぎると染まりません。85時間経過後には、染色能力はかなり落ちていました。
コーン(しぼり出し袋)を作るか、用意します。
セロファンを巻いて作る方法、既製品を使う方法、チャック袋やビニル袋から作る方法などがあります。
(ビニル袋等を使った場合、時間がたつとペーストの油分がしみ出してきますので、保管場所にご注意ください)
まず、大きめのチャック袋から作れる、2種類のコーンの作り方をご紹介します。
↑大きめのチャック袋を、上の線にそって切り取ると、
↑このように、4つのコーンの「もと」が取れます。
「かんたんコーン」はこれで出来上がり。
「円錐コーン」のほうは、下記のように巻いて作ります。
先端がとがるようにうまく巻いたら、セロテープを貼っていきます。
特に先端には、セロテープをしっかり貼ってください。
コーンに、ヘナペーストを詰めます。
へナペーストをスプーンなどですくって、コーンに詰めていきます。
円錐型のコーンの場合は、少しずつ中に落とすようにし、ときどきコーンを上下に振ると、
ペーストが先端までいきわたります。
または、いったんビニール袋の端っこにペーストを入れて先端に穴をあけ、
そのビニール袋ごと、円錐型のコーンの中に入れて、ペーストをしぼり出すようにするとうまくいきます。
ペーストを半分〜7割ほど入れたら、口を丁寧に折りたたんで、セロテープでしっかりととじます。
先ほどご紹介した「かんたんコーン」の場合は、輪ゴムでとじても構いません。
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インドのセミプロが作ったコーンの例。
自分が持ちやすく、
ペーストがこぼれなければOKです。 |
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輪ゴムでとじた「かんたんコーン」です。 |
描きましょう。
先端に、1mmあるかないかの小さな穴をあけます。
はさみは、まっすぐに入れましょう。
適当なところをやさしく握り、しぼり出していきます。
ここからは、できるだけ温度の高い、ほんのちょっとだけ汗ばむくらいの環境が最適。
毛穴を開かせることが大切です。
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新郎の手に模様を描くセミプロの手もと。
自作のコーンです。 |
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一般の主婦の手もと。
コーンを離して模様を確かめているところです。
自作のコーンです。 |
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インドの観光地で手早く模様を描く女性の手元。
既製品のコーンです。 |
最初にヘナパウダーをふるいにかけて細かいパウダーを作っていても、ときどき、穴に小さなクズなどが詰まり、ペーストがうまく出なくなることがあります。
そのときは、無理な力で押し出そうとせず(力をこめて描くと線が乱れてしまいます)、いらない布切れ・キッチンペーパー・ティッシュなどでコーンの先端をつまんでクズを取り除いてから再開しましょう。
つまんでキュッと取り除く動作をしたり、つまんで揉んだりなどしても、詰まったクズを取り除くことができない場合は、いらない紙などの上で力をこめてペーストを少し押し出せばOK。それでも駄目ならば、ヘナパウダーのふるいが足りなかったのかもしれません。そのペーストは「線」ではなく「塗り」に使うことにして、新しくパウダーをふるうことをおすすめします。
間違えて描いてしまったときは、すぐに拭き取ります。
範囲が大きければティッシュ・コットン・いらない布切れなどで。
細かいところは綿棒やオレンジスティック(ネイル用品)などを使えば修正できます。
綿棒やスティックを消毒用のアルコールに浸してから使う人もいます。
もっと細かいところの修正には、つまようじが便利です。
取材させていただいたネフェルさんは、コーンの先端をうまく使って、細かいところまで修正していました。
映像はこちら(MPEG形式)
穴が小さすぎるようなら、はさみを入れなおします。
穴が大きくなりすぎないよう、慎重に。
肌に描く前に、紙に練習するのもおすすめです。
直線・波線・円・マンゴー形・四角・三角などの単純な形から練習してみましょう。
手、二の腕、足首、足、お腹、胸もとなど、お好きなところにお好きなデザインを施すことができます。
インドの伝統的なデザインにチャレンジしてみたい方はメヘンディ・デザインブックをどうぞ。
インドにおける模様の意味は、たとえば以下の通りだそうです。
花:生命力
水や波:ゆたかであること
チェック模様:遊び心
白いオウムや孔雀:自然の情愛
目:まもりの力
ぶどうのつる:献身的な精神
(参考:"HENNA from head to toe!", Norma Pasekoff Weinberg, Search
Press, 1999)
ペーストがちょっと乾いてきたら、レモン&砂糖水をパッティングします。
ペーストが乾ききって剥がれ落ちてしまうまでの時間が長いほど、濃い色に染まります。
レモンなどの果汁と砂糖を3:1くらいの割合で混ぜたものを別皿に作っておき、
それを、コットンやティッシュを少しちぎって丸めたものなどに含ませ、軽い力でパッティングします。
タイミングは、ペーストの表面だけが乾いたくらい。
表面がかわいていないうちにパッティングすると、脱脂綿にペーストがついたり、乾いていないペーストがとけて流れ出してしまったりでデザインが崩れてしまいます。
逆に、ペーストが完全に乾いてしまってひび割れてからでは遅いのです。
レモンを使う理由は、湿り気を与えてペーストの力を持続させるため、ひび割れないようにするため、レモンの力で色が濃く出るようにするためです。
しかし、レモンだけではすぐに蒸発して乾いてしまいますので、砂糖を加えるのです。砂糖が水分を保ち、ペーストをベタベタとさせてくれ、ペーストが肌から剥がれ落ちるのを遅らせてくれます。ペーストが適度な水分を保った状態で肌に長くついていればいるほど、発色はよくなります。
最低1〜3時間、できれば4〜8時間、ペーストがはがれおちてしまわないように頑張りましょう。
あまりにもあっさり乾いてしまう場合は、砂糖の量を増やしてみて下さい。
肌をあたためて毛穴を開かせながら、ゆっくりと乾かします。
肌が冷えてしまうと、あまり色が濃く出ません。
外気が肌寒いようならば、肌をあたためるためにジンジャーティーなどを飲んでみたり、
たくさんのクローブをフライパンでカラ煎りして、その上に手をかざして外からあたためてみたり(モロッコの方法。色も黒っぽくなるといわれています)、
鍋にお湯を沸かしてクローブ(ホール)をゆで、その蒸気にあててみたりします。
とにかく、毛穴を開かせて下さい。
トイレットペーパーでくるんで、テープで固定、さらにラップをぐるぐる巻きにして、そのまま一晩、眠りながら定着させる人もいます。
剥がす前にオイルを塗ります。
デザインを施したところ全てに、たっぷりとオイルを塗ります。
オイルの種類は何でも構いません。
ユーカリオイル・マスタードオイル・セサミオイル・オリーブオイル・アーモンドオイル…
アロマテラピー気分で好みの香りのものを選ぶのもよし、
台所にあるものだけでやることにこだわるのもよし。
ハワイのヘナアーティストは、デザインを長持ちさせるために、マスタードペーストとサラダオイルを一面に塗り、ビニルをかぶせて一晩おきます(眠ります)。
モロッコでは、同じく長持ちさせるために、ビネガーとガーリックのペーストを塗布します。
乾いたペーストを剥がします。
6〜12時間経過してからはがすのがベストなので、
夜に描いて、ある程度乾いたら寝てしまうのがおすすめ。朝起きたらすっかり乾いています。
手や爪、バターナイフの背、カードなどで落としましょう。水や石けんは使わないで下さい。
肌に色がついているはずです。
(落とす直前に、コットンにオイルをしみこませてマッサージする人もいます)
もう一度、オイルを塗ります。
剥がしたあとに、もう一度オイルを塗ります。
できるだけ水に触れない
落としてから数時間は、デザインを施したところに水をかけないようにします。
このときに水をかけると、退色が早まってしまいます。
また、もし可能ならば、24時間はあまり水にさわらないようにしましょう。
また、強い日光はヘナの染色プロセスを妨げるのでよくない、という人もいます。
1日後、もっとも濃くなります
はがしてから1日程度経過したときに、もっとも濃い色が出ます。
部位が異なれば肌質が異なりますので、色の出方が違います。手の平や足の裏がもっとも濃い色になりやすく、手の甲や胸もとは薄い色になりやすいです。
ヘナは皮膚の表面だけを染めますので、5日〜2週間ほどでほとんど消えます。
デザインを長もちさせるため、毎日ボディオイルなどのオイル類を塗るのもGOODです。
「数日たって薄くなってしまったが、もっと長くもたせたい」
という場合は、数日おきに、上からなぞって描きなおしを繰り返します。
「発色しにくい部位にほどこしたので、薄い色づきが不満」
という場合も、3日ほど連続で同じデザインを描いてみてください。
発色しにくかった部位も、ほとんどがこげ茶色に出来ます。